私はエステサロンに電話をかけた。「平気、平気。みんなそれでも来ているわよ」店長はいつもどおりの調子でそう言った。たぶんこの人には生理痛がないのだろうと思ってしまった。彼女は平気だと言うけれど、本当に他のお客さんも生理中に来ているのかと思いながら、私はエステサロンに向かった。珍しく客は私だけだった。もう7時半だから、このあとは誰も来ないだろうと思うと、しんとしている施術室にたった一人でいるのも、何だか心細くなってしまう。ここで勧誘でもされたら、袋のねずみになってしまいそうだった。しかし今日は恥ずかしいことに、生理用ショーツをはいていたから、あからさまに他の客に分かってしまう心配がなくなったことだけには、心から感謝した。私が来店すると、すぐに店長が「女同士なんだから平気よ」と言ったが、不衛生な気がして苦笑いをしていた。「プラス700グラム?すごく増えたわねえ」カルテに記入したMさんは何も言わなかったのに、わざわざ後ろからカルテをのぞき込んで店長は大きい声を出した。Mさんは何か言いたそうな顔で、そんな店長を見ていた。そのあと店長は待合室に入っていった。サウナの準備は、FさんとMさんではじめた。たぶん今日の売り上げの集計でもしているのか、準備が済んだらFさんも店長のところに行った。「○○さんは下剤飲んでいるんですか」「はい。吐こうとしたこともあるんですけど、どうしても無理だったんで」「ふふふ」Mさんの奇妙な薄笑いが、静まり返った施術室に響き渡った。店長もFさんもいなくなって、彼女は前回と同じように私のそばに来て、摂食障害の話をはじめた。今日もまたさえない顔をして、目を合わさずにどこかを見ている。「じゃあ、低周波をはじめましょう」サウナの終了を知らせるタイマーが鳴ると、何かをしている途中だったのか、面倒くさそうに鼻息を荒くして、Fさんは待合室から戻ってくるとそう言った。片足ずつFさんとMさんが、私の足のツボに黒いパットをバンドで固定しはじめた。Fさんは手際よく留めていったが、Mさんはまだ慣れていないらしくFさんが片足を終えたときには、まだ2か所しか留めていなかった。「ちょっと緩いんですけど」Fさんが固定した左足は、しっかりとパットが張りついているのに、Mさんが固定している右足は、パットがはがれてしまいそうなほど緩かった。「ううん」と唸って固定するバンドを引っ張ってマジックになっている部分に留めていたが、それでもまだ緩かった。しかし二度も言うのは気が引けて、もう何も言わなかった。
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